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非現実の王国で

「TOKYO!」

水曜日なので映画を観てきた。野田凪についてのエントリでも引用したが、"ミュージッククリップ界の鬼才"ミシェル・ゴンドリーの新作2本(ジャック・ブラック主演の「僕らのミライへ逆回転」と本三部作のうちの「インテリア・デザイン」)が只今上映中で、そのうちもうすぐ公開終わっちゃいそうな本作を渋谷・シネ・アミューズにて。

公開中の映画についてはネタバレなしで、を一応のマイルールとしているんだけども、もうすぐ公開も終わりだし、言いたいことあるのでネタバレありで。

それはもう個性的な監督3人が、「TOKYO」を舞台に「TOKYO」を三様に描く三部作。NYからミシェル・ゴンドリー(「インテリア・デザイン」)、パリからレオス・カラックス(「メルド」)、ソウルからポン・ジュノ(「シェイキング東京」)。外国人の目を通した「TOKYO」=「東京」、そしてそこにある、相対化された文化やムーブメントや空気。東京を舞台にした最近の外国映画、と言えばソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」があるけど、あの作品での東京の描かれかたは少しあからさますぎるところがあった(あの作品ではそれがビル・マーレイ演じる俳優やスカーレット・ヨハンソン演じる新妻の孤独感の演出、という意味を持っていたんだけどもさ)。公式サイトのなかで言及があったように、ミシェル・ゴンドリーはこの作品を「ロスト・イン・トランスレーション」のようにはしたくなかったらしい。その正確な意図を読み取ることは難しかったけど、相対化されながらも普遍性を持った「TOKYO」の姿が描かれていたように思う。それは三作に共通して。

ともあれ「TOKYO」を見る外国人のまなざし、外国人の描く日本の姿を読むのにはどうしたって、あくまで「外国人が見たバイアスのかかった日本」であろうというバイアスがかかってしまう(わかりづらい文章で申し訳ない)。でもそれはバイアス=偏見というそのままの意味であるより、「外から見た日本の評価を知りたい(そしてさらに言えば評価されたい)」という欲求であろう。「日本大好きなガイジン」の存在を好ましく思うように。

ということでつまりは外国人の目から現代の日本はどう見えているか、ということが気になってしまうわけだけども、本作は上記したように普遍的な物語であったためにそれを見つけることは少し難しかった。そんななかでも目を見開いて探すと、「インテリア・デザイン」「シェイキング東京」に共通して登場する狭くごちゃごちゃとした部屋と街並、「メルド」が影響されているであろうゴジラのような街中を破壊する「怪物」、その他和紙の包装、折り紙、引きこもり、地震、などなど要素の単位で言えば盛りだくさん。全体的には普遍性が勝っていて日本らしい匂いが薄い。「インテリア・デザイン」と「シェイキング東京」は。しかしこの二作に比べ、レオス・カラックスの「メルド」だけは少し異様で、現代日本というより古い日本、具体的には戦時中の日本のイメージがすごく強い。地下道の様子や留置場?の独房なんかの描写ではあからさまに感じた。

ストーリーとしては三作とも偶然なのかどうにもこうにも不条理。個人的に一番好きだったミシェル・ゴンドリーの「インテリア・デザイン」は特に、安部公房ばりの不条理さ!同時に台詞にも思想が読み取れて面白かった。ポン・ジュノの「シェイキング東京」のみんな引きこもって誰もいない街中に、地震が起きることで人が出てくるというオチは、よくよく考えると日本っぽくて、逆に日本人には思いつけないようなオチだと思う。面白い。そして映像がきれい。

そして出演陣について。「メルド」の「メルド」役ドゥニ・ラヴァンは言うまでもなく圧倒的。しかしながら本作は外国人監督が日本人を撮るということがミソだと思うので詳しくは割愛。出演陣については「シェイキング東京」がすばらしい。主演の香川照之はやっぱりどうしたってすごい。西川美和「ゆれる」でのように、「なんかちょっとダメな人」の演技がすばらしい。竹内直人はポン・ジュノ監督の代表作の「グエムル」のモデルになった人だというような噂を聞いたことがあるけどそういうゴシップ的要素を抜いてもすばらしい。それに蒼井優。「フラガール」のときも思ったけれど彼女の魅力は、素朴な容姿もさることながらそれ以上にしなやかな身体だ。あの長く細い手足がわたしにもあったら…!うらめしい。他には「インテリア・デザイン」の加瀬亮。もともと好きな人なのでどうにもこうにもえこひいきしてしまうんだけども、芸術家肌の青年(そしてちょっとダメ男)の感じがよいよい。わたしもあんな男と将来のことなんか考えもせずに気楽に毎日過ごして振り回されたりたまにそれに怒ってケンカして謝られてもう、って思いたい…とかっていうのは妄想なので映画の感想ではない。

それにしても「インテリア・デザイン」の加瀬亮の台詞はものすごく日本語的な表現、言い回し、語感を備えていたんだけどもミシェル・ゴンドリーはあれをどのように演出したんだろか。

…とつらつら書いてみたけど、面白い映画でした。面白い、の意味は「映画」として、っていうだけじゃなく(サブ)カルチャー論みたいな視点からという意味も含め。