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非現実の王国で

鑑賞履歴

書いてなかった分をちょこちょこと。

ピュ〜ぴる

近年世界的な評価を手中にしている日本人コンテンポラリーアーティスト、ピュ〜ぴる。
手作りのコスチュームでクラブ通いをしていた2001年から、性同一性障害、失恋、去勢手術を経て横浜トリエンナーレでのパフォーマンスに至るまでの感動の軌跡を、長年の友人である松永大司が8年間に渡ってドキュメントした。

男性として生を受けたピュ〜ぴるは自分の体に違和感を覚えるようになるが、自ら制作した奇抜なコスチュームを身にまとってクラブへ通うことで、その違和感を解消していた。やがてそのコスチュームがアートとして注目を浴びるようになり、現代アートの世界で芸術家として創作活動を始めることになる。『Pyuupiru 2001-2008』では、ピュ〜ぴる自身のインタビューを通して心と身体、そして生み出された作品の変遷を辿る。また、事実を複雑な心境で受け止めつつも、常にあたたかく見守ってきた家族や周囲の人たちとの信頼関係、愛する人との微妙な距離をも膨大なフッテージによって明らかにしていく。

わたしが彼女を知ったのは2008年横浜美術館GOTH -ゴス-展」。彼女自身は別に「ゴス」の人ではないと思うけれども、この展示はとても衝撃的だった。それもちょうど彼女が肉体的に男から女へ「羽化」した時期で、セルフポートレートには少女と少年のどちらの姿もあり、おおきく真っ白なウェディングドレスはまるで蚕の繭のようで、肉体的に女になった彼女にまとわれるのを待っている、というよりは、羽化した彼女を産み出したあとの繭、彼女は運命づけられてその繭の中から生まれてきたんじゃないかと思わせる必然性があった。

そしてこのドキュメンタリ、とてもなまなましかった。8年間の間に、劇的に変化していく。強迫観念的な作品は全身全霊をかけて人を愛してからこそ。わたしはこれが好き、これを所有したい、わたしはあの人が好き、あの人に愛されたい、愛されなければならない…!何よりも強いパワー。思い込む力。クライマックスの横浜トリエンナーレのパフォーマンス(すでに6年も前なんですが)にそのへんの全てが凝縮されていて圧巻。とにかくパワーと愛を感じた。

あと素直にピュ〜ぴる本人がかわいいです。ほんと。一途で一生懸命でまっすぐで素直。作品を作る、イメージを形にする、平たい言葉で言えば「身を削って」形にする、その姿に胸がぎゅうっとなった。映画のなかでよく監督がピュ〜ぴるに「なんで○○するの?」って聞くと「○○したいから」と。彼女のあたまの中ではそのもののイメージがくっきりとあって、それを実現しなきゃいけないっていう強い思い(それこそ強迫観念的な)があるんだろうと思う。その感覚と思いの強さ。

好きだこうなりたいこうしたいっていう感覚はとても本能的でベーシックだけれども、本質だ、と思う。だからこそとても力強い。

SOMEWHERE

ヴァージン・スーサイズ」「ロスト・イン・トランスレーション」「マリー・アントワネット」のソフィア・コッポラ最新作。「マリー・アントワネット」から4年。

これぞソフィアコッポラ!よっソフィア!と太鼓を叩きたくなるほどソフィアコッポラ。それ以外の何者でもない。
ゆるくてだらだらしたカットが続いてこれいつまで続くんだろう…とか、時代のアイコンがちりばめられてたりとか、なんか音楽がおしゃれっぽかったりとか、モヤッとしたりとか、そういうの全部ひっくるめてソフィアコッポラだからそれ以上もそれ以下もない。(と言いつつ「それ以上」を期待してはいる。)
あとエルファニングは反則だ!

たまの映画

東京の上映、ギリギリ駆け込み。またゆるいドキュメンタリ。3人(3人なんですよ)のそれぞれのライブシーンがとっっってもよい。

たまの音楽って小さい頃は不気味で怖いもので、わたしにとっては物置の黒い影とか、夜にかたく閉められたカーテンの外とか、動物の顔に見える寝室の天井の木目の模様とか、もったいないお化けのCMとか、メトロポリタン美術館の歌とか、そんなものと同じようなものだった。大人になった今、たまの音楽を聞いて怖いと思うことはなくなったけれど、その感覚はまだそこにあると思う。

それともう一つ、映画の中で知久さんが「健康マニアだった父がいきなり交通事故で死んだ、ありゃりゃ〜〜」と仰っていたその感覚。恐怖の対象である「死」について、死んじゃったありゃりゃ、って受け止められる感覚、じいちゃんばあちゃんを「かわいい」と思う感覚。この感覚は何なんだろうね。不謹慎を笑う、ブラックユーモアとは違う。これもたまの音楽にあるもの。

とても不思議。どこに行くかわからない、つかみどころのない。この感じ。この感想も上手く書けないじゃないですか。

あとわたしが書かなくても…ということなので特に書きませんが、石川さんはほんとにすごい方だ。感覚的に見えて、そうではなくて、頭脳的な方なんですよね。先日のロック食堂でのイベントの時にお話しさせていただいた印象のとおりで、それをどんなときも、どんなひとものに対しても同じようにいつでもその100%という。

今度はパスカルズ観たい!